介護の悩みあれこれ

難聴は認知症を進行させる?聞こえが大切な理由。

emiko0419

〜介護現場ナースが見ている『会話が減るリスク』〜

娘さん
娘さん

母さん、最近テレビの音が大きいのよね。

息子さん
息子さん

聞こえにくいのかな。話しててもよく聞き返してくるんだよな。

娘さん
娘さん

耳が遠くなってきたのかしら。もう73歳だもんね…。

息子さん
息子さん

耳の遠さが認知症のリスクになるって聞いたことがあるんだけど…

「親との会話が噛み合わないことが増えた」「聞き返されることが増えた」などと感じていませんか。

アメリカの大学の研究によると、『難聴がある人は認知症リスクが最大5倍になるそうです。』…って聞くとちょっとビックリですよね?

介護の現場でも聞こえにくさから会話が減り、気持ちが落ち込む方は多いです。

今回は現役ナースが見た介護現場でのエピソードも含めて、聞こえが大切な理由をお伝えします。

難聴と認知症の意外な関係

難聴にはいくつか種類がありますが、高齢者に多いのは「加齢性難聴」です。

加齢による聴覚器官の劣化で、少しずつ聞こえが悪くなっていきます。

アメリカの研究データ

ジョンズ・ホプキンス大学の研究によると、

  • 軽度〜十度の難聴→認知症リスクは2~5倍
  • 中等度〜重度の難聴者→認知症有病率は61%高い
  • 補聴器の使用→認知症リスクが32%低下

科学的にも「聞こえ」は大切だと分かりますね。

難聴が認知症のリスクを高める理由

  • 聞こえないと脳への音声刺激が減り、認知機能が低下しやすい
  • 聞き返すのが恥ずかしく、会話が減って社会的孤立につながる。

【実例①】電話に出ない…と思ったら?

老人ホームに入居中の80歳代のおばあちゃん。
両耳が難聴で、耳元で大きな声を出さないと聞こえませんが補聴器は持っていません。
気が短く、職員に対しても強い口調になることが多く、「関わるとちょっと緊張する人」と思われていました。


ある日、娘さんに用事があって「何回電話をかけても出ない!」と怒って職員に助けを求めてきました。
職員が代わりに電話をかけると、娘さんはすぐ出てくれました。
実は、おばあちゃんは娘さんの声が聞こえていなかっただけで、「出てない」と思い込んでいたんです。
この後も、同じようなことは何度もありました。


おばあちゃんは「娘が冷たい」と思い込み、娘さんは「母は怒ってばかり」とストレスを抱える…。
聞こえないことが、家族関係にも影響を与えてしまうと感じた出来事でした。

会話が減るリスクと孤立感

「耳が遠いから…」と会話を諦めてしまうおじいちゃん・おばあちゃんは本当に多いです。

会話が減ると笑顔も減り、気分が塞ぎ込む方も少なくありません。

【実例②】孤独を深めてしまったおじいちゃん

老人ホームに入居されて間もなかった、80歳代のおじいちゃん。
妻と死別、子供もおらず、面会に来る親族もいませんでした。


両耳が難聴でしたが補聴器は持っておらず、さらに病気で徐々に視力が低下。
最初の頃はスタッフにも明るく話しかけてくれていましたが、次第に口数が減り、
ある日ポツリとこう言われました。
「もう、自分なんか生きていても仕方ない…」
聞こえない・見えない・話せない。
この「3つの壁」が、日常の孤独感をさらに深めていたようです。

スタッフも積極的に話しかけたり、関わる時間を増やしましたが周囲とのつながりは少しずつ薄れていきました。
難聴は単に「聞こえない」だけの問題じゃなく、心の元気を奪うリスクもあると痛感したケースです。

家でできる『耳のケア』の第一歩

まずは聞こえをチェック

  • スマホアプリやネットで聴力をセルフチェック
  • 耳鼻科での聴力検査
  • 定期的な耳垢除去も忘れずに

【実例③】耳垢で聞こえない?!

90歳代のおばあちゃん。突然「聞こえにくくなった」と相談があり耳鼻科へ。
結果は、両耳が耳垢で塞がれていただけ。除去すると聞こえは元通りに。
こういったケースは実は少なくありません。

補聴器より手軽な『集音器』という選択肢

  • 補聴器は高額で買いづらい
  • 集音器には1万円前後で試せるモデルも多い
  • デザイン性も高く、日常で使いやすい                                                                                                                                                                                     

在宅介護でも難聴への対処はできる

難聴は「微笑みの障害」とも呼ばれます。

「聞こえないから笑ってごまかす」こともありますが、そのままにすると認知症リスクはさらに高まります。

親との会話を増やすことは、心と脳の健康を守る第一歩です。

集音器は、認知症リスクを下げるきっかけになる可能性があります。

ナース・ミー
ナース・ミー

おすすめの集音器と選び方のコツはまた別の記事で書きますね。

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ナース・ミー
ナース・ミー
現役の介護現場ナース
看護師歴25年超え、介護現場で働いて10年以上。今日も老人ホームで勤務しながら”現場で起きているリアルな介護”を発信しています。「介護の負担を少しでも減らしたい」「自宅でのケアを楽にしたい」そんな方のために、経験から得たヒントをわかりやすくお届けします。                 
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