高齢者が水分を摂らない…どうする?在宅介護でできる工夫と失敗しないコツ


お母さん、お茶が減ってないですね。

朝に飲んだから今はいらないわね、のども乾いてないし。

具合が悪くなったらどうするんですか。

お茶ばっかり飲んでられないわよ〜、運動もしてないのに、、、。
「水分を摂りたがらない」「飲んでも少しだけ」など、介護中に同じ悩みを抱えていませんか?
高齢者はのどの渇きに鈍感なことが多く、気づかないうちに脱水症状や膀胱炎を起こすことがあります。
今回は、現役介護現場ナースとして体験したおばあちゃんの事例も交えながら、水分摂取を促すコツをまとめました。
高齢者が水分を摂らない理由

「のどの渇き」感覚の低下
年齢とともに体内の水分量は減っていきます。さらに、脳の機能低下により「のどが渇いた」と感じにくくなることもあります。
その結果、体は水分を必要としていても本人は飲もうとしない…という状況が起きやすくなります。
トイレを避けたい心理
「夜中にトイレに行きたくない」「漏らすのが怖いから飲みたくない」「昼間でも何度もトイレに行きたくない」
こうした心理から、無意識に水分を控える方も少なくありません。
お茶や水ばかり飲みたくない
「味がないから飲みたくない」「お腹いっぱいでこれ以上いらない」こういう方は多いです。
ですが、意外に甘い飲み物なら飲んでくれる方も多いんです。

【実例】お茶は飲まないのに…ジュースなら笑顔で!
数年前に働いていた老人ホームでの話です。90歳代のおばちゃん、年相応の物忘れ程度。
定期的にお茶を配っていますが、いつも「のどが渇かない」「お腹いっぱいなのよ」と言われ、コップが空になるのは稀でした。
結果、膀胱炎のような症状を繰り返してしまう状況。
おばあちゃんは甘いものが好きで、小さなお饅頭やチョコレートを時々自分で食べていました。食後でも甘いものは別腹のようです。
そんなおばあちゃんに1日に2回程度、家族に買ってきてもらったジュースを提供することにしました。「ジュースですよ」と声をかけた時は、とてもいい笑顔をされていたのが今でも印象に残っています。
「お茶の次はジュースの回」というリズムができたことで、おばあちゃんはお茶を飲む量が少し増えました。
それでも十分ではなかったので、食事についてくる味噌汁やスープ、牛乳を十分に摂ってもらうようにスタッフ間でも周知。
水分を摂ってもらう難しさを改めて実感したケースでもありました。
在宅介護でできる水分摂取の工夫

1、味付き飲料を上手に活用する
お茶や水が苦手なら、ジュース・コーヒー・紅茶・スポーツドリンクなどをうまく使うのがおすすめです。
糖分が気になる場合は、水で薄めるとちょうどよく飲んでくれるケースもあります。
介護する方が普段飲まれているものを一緒に飲んでみて、好みを確認するのもいい方法です。
2、お菓子やおやつと一緒に出す
「飲む」だけだと拒否されやすいですが、お菓子と一緒なら飲んでくれる方が多いです。
「お茶+おまんじゅう」「ジュース+ビスケット」など、セットで出すと成功率が上がります。
3、こまめに少量ずつ提供する
一度にたくさん飲んでもらうのではなく、1日5〜6回に分けて少量ずつ。
「お茶にしますか?ジュースにしますか?」と選択肢を与えると、本人の意欲も高まります。
4、水分が多い食品も併用する
フルーツ(スイカ、なし、ももなど)、野菜(きゅうりやトマトなど)、豆腐やゼリー、あんかけやとろみ付きの料理でも効率的に水分補給ができます。
脱水・膀胱炎を早期発見するためのサイン

- 皮膚がいつもより乾燥している
- 尿の色が濃い、においが強い
- 急に元気がなくなった
- 発熱、膀胱炎の症状(頻尿、排尿時の痛み、残尿感)
こういったサインが出たら、かかりつけの医師や担当のケアマネージャーに相談しましょう。
小さな工夫で「飲まない問題」は解決に向かう
- 高齢者は「のどの渇き」に鈍感になりがち
- ジュースやお菓子をうまく活用する
- 一度にたくさん飲ませるより、少量を回数多く
- 食事からも水分を摂る意識をもつ

水分不足は脱水や膀胱炎だけでなく、 認知症リスク にもつながります。
小さな工夫の積み重ねが、おじいちゃん・おばあちゃんの 元気と笑顔 を守る一歩です。
今日からできること、ひとつ試してみませんか?
関連記事
高齢者の「聞こえにくさ」が会話や心の元気に影響すること、知っていますか?
